小・中・高等学校の社会科教科書では、2000年代のはじめごろまでに、大きな変化が起こりました。人権の歴史、なかでも部落問題に関する記述が大幅に増加し、内容も豊かになりました。もちろん各教科書会社の傾向は少しずつ異なりますが、大まかに「中世河原者の庭作り」「江戸時代の身分制度」「解体新書」「渋染一揆」「解放令」「水平社」「戦後の同和施策」などのテーマについて多くの教科書が取り上げています。そして、それぞれの記述内容も、大きく変わりました。以前の教科書を読んできた世代から見ると、その違いは目を見張るばかりです。
この背景には、支配階層の動きだけでなく、民衆の視点から日本の歴史を見つめ直そうとする多くの人々による研究の深まりと広がりがあります。特に、今日もなお存在する部落差別に対して、「差別がどのように生起したのか」「被差別民衆はその中をどのように生きたのか」などを実証的に明らかにすることで、その解決の道筋を見いだしていこうとする取組が教科書記述にも反映してきた結果だといえます。
この「DVDシリーズ: 映像でみる人権の歴史」は、そうした新しい研究の成果と教科書記述の変化をふまえ、新たに見いだされた豊かな史料を積極的に活用して、映像化することで、教科書に基づいて授業を進める場合の補助教材、あるいは社会啓発を深める場合の学習教材として作成しました。とくに、若い世代の先生や担当の方々が、初めて「人権の歴史」を取り上げる場合、その基礎理解にも役立つよう工夫しました。さらに授業実践や啓発を深めるための参考資料も、文字データとしてできるだけ多く添付しました。