企業倫理の意識を向上させる3つの方法|コンプライアンス違反の原因を解説

企業は、利益を追求するだけではなく、消費者よりも情報を提供する側として優位な存在であることを自覚し、道徳的規範に基づいた行動をとらなければいけません。企業が従わなければならない、道徳的規範のことを企業倫理といいます。

そもそも企業倫理とは?具体例を紹介
企業倫理とは、企業が社会の一員として果たすべき道徳的・倫理的な責任や行動の基準を指します。端的に言うと、「法律違反でなければOK」ではなく「社会の信頼に応える誠実な行動」が企業倫理です。
法令遵守(コンプライアンス)や顧客・取引先との誠実な取引、ハラスメントの防止などはどれも企業倫理の内容のひとつです。企業倫理は、個人倫理・職業倫理・組織倫理の3つの要素で説明される場合があります。
要素 | 内容 | 例 |
---|---|---|
個人倫理 | 従業員一人ひとりの倫理観 | 公私の区別・正直さ・ルールの遵守など |
職業倫理 | 仕事に関する倫理観 | 守秘義務の遵守・仕事の正確さなど |
組織倫理 | 企業の倫理観 | 公平な人事制度・CSR活動など |
個人倫理は、従業員一人ひとりの倫理観を指します。公私混同せず誠実に仕事をしているか、ルールを守りミスを正直に報告しているかなどが、個人倫理の実例です。組織を構成する従業員の倫理観は、組織全体に影響する重要な要素ともいえます。
職業倫理は、企業・個人が行う仕事に関する倫理観です。守秘義務を守っているか、忠実に業務を行っているかなどが該当します。顧客の情報を悪用したり、手抜き工事を行ったりする行為は、職業倫理が失われていることを示す一例です。
組織倫理とは、企業や部署などの組織に関する倫理観です。企業においては、公平な人事制度があるか、CSR(企業の社会的責任)活動が行われているかなどが、組織倫理にあたります。
個人倫理・職業倫理・組織倫理のすべてが徹底された状態こそ、企業倫理が浸透しているといえます。企業は、コンプライアンスや社内規則の徹底はもちろん、各種研修などを通して企業倫理の醸成を目指す努力が必要です。
企業倫理の必要性
企業倫理の必要性は、以下の4つの側面で説明できます。
- 社会的信頼の獲得:企業イメージやブランド価値を向上させるため
- リスク管理:社会的信頼を損なう不祥事の発生を防ぐため
- CSR(企業の社会的責任)への対応:企業価値を守るため
- 社員のモチベーション向上:社員の働きやすい職場を作るため
まず、企業倫理は企業が社会からの信頼を得るために必要不可欠です。個人・組織が、企業倫理に従って誠実に仕事に取り組めば、企業イメージやブランド価値の向上に繋がります。
一方、不正・隠蔽・ハラスメント・情報漏洩などの不祥事が発覚すれば、企業の社会的信頼は一瞬で失われます。企業倫理を浸透させることは、不祥事の発生を防ぎ、企業イメージを守るためのリスク管理としても重要です。
近年はCSR(企業の社会的責任)も重要視されており、環境問題や人権問題に配慮する企業姿勢が求められています。企業倫理は、環境問題・人権問題などへ配慮した企業活動を行ううえで、重要な判断基準だといえるでしょう。
企業倫理が浸透していると、結果として正しい行動が評価される風通しのよい職場になります。これは、社員の働きがいやモチベーションの向上にもつながるでしょう。
企業コンプライアンスに必要な「企業倫理の3階層」
企業のコンプライアンスは「企業倫理の3階層」として3つの階層に分けて考えることができます。第1階層から第3階層まで、それぞれチェックしておきましょう。
第1階層:法令順守
企業倫理の第1階層は法令遵守です。企業はあらゆる活動において法律を守る必要があり、この第1階層は最低限守らなければならないルールともいえます。違反した場合、行政処分や刑事罰を受ける可能性があるため特に注意が必要です。
具体例として労働基準法・個人情報保護法・独占禁止法の遵守などが挙げられます。法律にやってはいけないことが明記されているため、理解しやすいともいえるでしょう。
第2階層:社内規則の遵守
第2階層は社内規則の遵守です。企業が独自に定めた就業規則・行動規範・マニュアルなどを守って業務に取り組むことを指します。第1階層の法令遵守のように法的な罰則はないものの、法律より細かく定められているのが特徴です。
例えば、ハラスメントや備品・情報の持ち出しなどは社内規則の遵守がなされていない状態です。世間に発覚すれば、企業イメージやブランド価値に大きな悪影響を及ぼす恐れがあります。
法律と比べると、ルールが従業員に浸透しにくいのも社内規則の特徴です。最重要項目はいつも目につく場所に掲示したり、業務マニュアルをいつでも参照できる場所に保管したりと、従業員に規則を理解させる仕組み作りが必要不可欠だといえます。
第3階層:倫理的な行動
第3階層は、倫理的な行動です。法律や社内規則に具体的な記載がなくても、従業員は倫理観に基づいた行動をとる必要があります。
具体例としては、顧客に寄り添った提案ができているか、ミスに関して適切な謝罪ができているかなどが挙げられます。自分本位の提案や、不誠実な謝罪などは、倫理的な行動ができていない例のひとつです。
倫理的な行動がとれるようにするには、従業員一人ひとりの自主的な配慮や正義感が求められます。明確な基準がないため教育や指導は難しいものの、企業がコンプライアンスを徹底し、社会から信頼されるためには重要なポイントです。
企業倫理の意識を向上させる3つの方法
①研修を実施する
企業倫理に関する研修は、従業員の倫理的な意識を高める上で重要な役割を果たします。どういった行動が企業倫理違反になるのか、具体的な行動例をあげて説明することが有効です。
研修の例としては、自社の企業倫理に則って、「従業員がしてはいけないこと・しても良いこと」を具体例をあげ、判断・行動基準を提示します。もしくは、過去の違反の事例などを提示するなどをして、「どういった行動が倫理違反にあたるのか」を理解しやすい形で学びます。具体的な事例やケーススタディを通じて、実践的なスキルや知識を身につけることができます。
②人事評価にコンプライアンスや倫理に関する項目を設ける
企業倫理に則った行動やコンプライアンスへの遵守を促進するために、人事評価に関連する項目を設けることが効果的です。従業員の行動や業績だけでなく、倫理的な判断や行動に対する評価基準を明確にすることで、倫理意識の向上を促します。
客観的な視点で、第三者によって評価される場をもつことは、守らなければいけないという意識を各社員が明確に持つきっかけに繋がります。
③自社の企業倫理を全社員に共有する
企業倫理規定や行動規範を全社員に共有し、徹底することが重要です。これにより、従業員は企業の倫理的な期待や基準を理解し、日常業務において遵守することが容易になります。「この行為は倫理違反なのではないか」と、少しでも疑問に思った時点で、社内に相談できる環境を整備することも重要です。 Drama-style video training
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企業倫理とコンプライアンスとの違いについて
企業倫理は、組織や個人が社会的責任を果たすための道徳的な原則や価値観を指し、組織の文化や行動に影響を与えます。一方、コンプライアンスは、法律や規制に対する遵守義務を指し、法的なルールや規定に従うことを強調します。
企業倫理の意識向上が重要な3つの理由
①企業の社会的責任を果たすため
企業は社会の一員として、事業を発展させるだけではなく、倫理的な責任も果たす必要があります。企業倫理の向上は、消費者などのステークホルダーに対し、貢献や信頼構築につながります。
②企業活動を健全かつ透明に行うため
倫理的な行動は企業の信頼性や透明性を高め、組織の持続可能な成長に不可欠です。倫理的なリーダーシップや組織文化が、健全な企業活動を促進します。
③内部統制を強化するため
企業倫理の徹底は、内部統制の強化にも寄与します。倫理的な行動や判断が組織内で浸透することで、リスク管理や業務プロセスの効率化が図られます。
企業倫理違反の事例5選
①不正経理や製品偽装など意図的な違反
企業の利益を優先し、粉飾が行われるケースがあります。具体的には、横領や水増し請求、食品の産地偽装などです。
②個人情報流出など、情報管理に関する不備
機密情報や個人情報の適切な管理が行われず、情報漏洩やプライバシー侵害が発生するケースがあります。個人情報についての管理の仕方について、社内で意識を統一することや、個人情報保護法について理解をする場を設ける必要があります。
③不適切な行動や判断
職務遂行や意思決定において、倫理的な基準や社会的責任を無視する行動が行われるケースがあります。
④上司による部下への圧力
上司や管理職が部下に対し、不当な圧力や命令を加えることで、倫理的な問題が発生するケースがあります。ノルマや利益達成のために、圧力から倫理違反を行う場合があります。
⑤コンプライアンス違反を指摘・改善する仕組みが企業にない
従業員がコンプライアンス違反を指摘しても、適切な対応や改善が行われないケースがあります。相談窓口や法務関係について相談できる専門部署をなどをつくり、第三者に気軽に相談できる仕組みをつくることが重要です。
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