パワハラ研修で学ぶ:企業が知るべき法的義務と内容
「パワハラ研修を実施しなければならない理由は?」
「パワハラ研修の方法や実施のポイントは?」
上記のような疑問を抱えていませんか。
近年多くの企業で問題となっているハラスメント問題を背景に、防止のための研修が義務化されました。研修の方法はさまざまあり、企業ごとに抱える課題や業種などによって選択する必要があります。
そこで本記事では、パワハラの基本的な定義から研修が義務化される背景まで網羅的に解説します。パワハラ研修の方法や実施のポイントも紹介するので、研修を検討している人は必見です。
パワハラとは
職場における『パワーハラスメント』とは、労働施策総合推進法 (パワハラ防止法)によって以下の3つの要素をすべて満たすものとして定義づけされています。また、具体的なパターンとして6つの類型が挙げられています。 [注1]
3つの要素は下記とされています。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
- 労働者の就業環境が害されるもの
「優越的な関係を背景とした言動」とは、上下関係や1対多などの抵抗できないなかで行われる行為を指します。上司からの威圧や、同僚・部下からの集団による指摘が主な例です。
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」とは社会通念に照らし、明らかに業務に必要性のない言動を指します。年齢や障害の有無・国籍・心身の状況・人格を否定など、業務とは関係がなく常識の範囲を超えた言動はパワハラにあたります。
「労働者の就業環境が害されるもの」とは、パワハラ被害者が心身に苦痛を感じ、本来の能力を発揮するのに支障を来たす言動です。パワハラに該当するかの基準は、一般的な会社員が同様の状況で同じ言動を受けた場合、支障が生じるか否かとされています。
なお、客観的にみて、業務上必要な範囲で行われる指示や指導はパワーハラスメントには該当しません。
また6つの類型は下記です。これらに該当するかどうか照らしあわせて、パワハラに該当するかどうかを判断します。
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
また上記の6類型は、あくまでも一般的なパワハラを6つに分類したものです。
これらに該当しなくても、パワハラとして認定されることもあります。
パワハラ研修の義務化とは
2020年6月に行われた「労働施策総合推進法」の改正によって、大手企業へのパワハラの防止措置が事業主に義務付けられました。また、2022年4月からは大手企業だけでなく、中小企業も含めて完全義務化がされており、企業が対応すべき項目の1つとして追加されています。
事業主に義務付けられた具体的な防止措置は、以下のとおりです。[注2]
- 事業主の方針の明確化及びその周知、啓発
- ハラスメントに関する相談窓口の設置と対応するための体制の整備
- 職場のパワハラへの事後の迅速かつ適切な対応
パワハラ研修の義務化は「事業主の方針の明確化及びその周知、啓発」に含まれます。
パワハラを含むハラスメント研修が求められるようになったのは、ハラスメントの深刻化と法律による義務化によるものです。
厚生労働省が発表した「令和4年度過労死等の労災補償状況」によると、パワハラ認定が147件、セクハラ認定が66件と過去最高でした。[注3]上記は労災認定された事案だけなので、被害を感じている労働者はもっと多いでしょう。
そのような状況で、労働施策総合推進法の改正と同時に男女雇用機会均等法と育児・介護休業法の一部改正も行われました。ハラスメントが深刻化している社会を、法律の改正によって変えていこうとする動きが強まっています。
[注2]厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」
[注3]厚生労働省「令和4年度過労死等の労災補償状況」
パワハラ研修の目的と内容
パワハラ研修を行う主な目的は、以下のとおりです。
- パワハラについて理解を深める
- パワハラの防止策を学ぶ
- パワハラに対するリテラシーの強化
- ハラスメントが起きない組織の醸成
研修を行うことで一人ひとりの意識を改革し、ハラスメントを許さない企業風土の醸成を目指します。
ここでは、180分〜360分を想定したパワハラ研修の内容を一例として紹介します。対象者は管理監督者と一般社員です。研修は講義やグループワークなどを組み合わせて行われます。
具体的な講義内容は、次のとおりです。
- パワハラの定義
- パワハラの現状
- パワハラの背景
- パワハラの影響
- 一般防止策・未然防止策・再発防止策
最後に講義の内容を踏まえ、パワハラ事例の検討やパワハラの相談対応などの演習をグループで行います。
上記をベースに、自社の状況を踏まえて行うのが効果的でしょう。
パワハラ研修の主な方法
パワハラ研修の主な方法は、以下の3つです。
- 社外のセミナー研修に参加
- 外部講師を招く
- eラーニングなどのオンライン研修
1つずつ詳しく解説します。
社外のセミナー研修に参加
社外で開催されるハラスメントのセミナー研修に参加する方法です。ハラスメントの専門家から学べるため、理解を深めやすいのが特徴だといえます。
企業側の事前準備も不要で、従業員に研修会場に足を運んでもらうだけで研修を実施できるのもメリットです。ただし、社外セミナー研修は内容が決められている場合が多く、自社の状況に合わせた研修を受けられない可能性があります。
あらかじめ内容を確認し、自社に最適なパワハラ研修を受けられるセミナーの選定が必要です。
外部講師を招く集合研修
パワハラ研修の専門家を自社に招いて、研修を行う方法です。社内のハラスメントに対する課題や学びたい内容を事前に共有することで、自社のニーズに合ったパワハラ研修を行えます。
セミナーと比べ、スケジュールの調整や会場のセッティングなどの手間がかかるのがデメリットといえます。また、研修の規模や実施回数と、通常業務との兼ね合いを考慮した計画を立てる必要もあるでしょう。
eラーニングなどのオンライン研修
動画教材を使ってオンラインで研修する方法もあります。既成の動画教材をすぐに利用できるため、大きな手間をかけずに研修の準備が可能です。
eラーニングやオンライン研修の大きなメリットは、視聴環境さえあればどこにいても受講できる点です。また、1度教材を準備してしまえば、会場を抑えたり講師に研修を依頼したりする必要もありません。
eラーニングシステムによっては、従業員の受講状況を確認できる機能があります。ただし、受講者が内容を本当に理解しているかを把握しづらい面があります。受講後に課題やレポート提出を課すなど、研修内容の理解を定着させる対応を行いましょう。
パワハラ研修のポイント
企業内でパワハラを防止するために、研修の際は以下の3つのポイントを意識しましょう。
- 経営者からのメッセージ発信
- 社内アンケートなどの現状調査
- パワハラ防止には研修を繰り返し行うこと
それぞれ詳しく解説します。
経営者からのメッセージ発信
「パワハラは断じて許さない」という断固たる意志のあるメッセージを、経営者から社員に向けて発信することも重要な役目を果たします。
企業のトップである経営者が明確に意思を表明することで、パワハラの起きない組織の醸成に繋がります。また、パワハラを容認しないことを社内規則や社内規定に盛り込むことも有効的です。
経営者が強い意志を持ってメッセージを発信すれば、現場で働く社員の行動の是正に繋がります。
社内アンケートなどの現状調査
社内のパワハラ問題を解決し、根絶するためには現状の把握が必要です。現状を把握すれば、社内で起きているハラスメントの課題を研修内容に組み込めます。また、実際にパワハラが起きているのであればすぐに対応し原因から排除することも可能です。
現状調査のほかに、従業員にパワハラを受けた際の相談窓口などについて周知することも重要です。具体的には主に、下記3点を行うと問題解決に直結しやすいことを伝えることが大切です。
- 周囲への相談
- パワハラの内容を記録する
- 社内の相談窓口や、外部の公的機関の相談窓口に相談する
社内アンケートなどの現状調査は1度の実施ではなく、年に数回など定期的に行っていきましょう。
パワハラ研修は具体的に繰り返し行うこと
「義務化されたからパワハラ研修を1度行えばいい」というような考えでは意味がありません。パワハラが起きない企業を本当に目指すのならば、研修は具体的に継続的に行う必要があります。
人間は忘れる生き物です。その場では「こういう行動はダメなんだな」と思っても、日常に戻れば時間とともにその意識は薄らいでいきます。そのため、時間をかけて繰り返し研修を実施することに加え、各研修に具体性をもたせて、実際の言動と比較できるようにすることが大切です。
年間の行事としてあらかじめスケジュールに組み込むことや、問題が起きた時点で臨時で行うなど、臨機応変に実施しましょう。
パワハラ研修には動画がおすすめ
パワハラを企業から根絶するためには、継続的な研修の実施が必要です。しかし、対面での研修を実施するには会場の確保や講師への依頼などのコストがかかってしまいます。
コストやリソース面の課題を感じている企業におすすめなのは、動画を使ったパワハラ研修です。東映が運営する「ドラスタ」は、映画会社のノウハウを活かした高いクオリティで記憶に定着しやすい研修動画を提供します。
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ドラスタ