心理的安全性を高める研修とは?目的、研修の作り方などを解説

近年、企業等での生産性向上や離職率低下の観点から「心理的安全性」が注目を集めています。しかし、「言葉は聞いたことがあるが、具体的にどう高めれば良いかわからない」「研修を企画したいが、何から始めればよいか迷っている」という人事担当者の方も多いのではないでしょうか。心理的安全性の向上は、単発的な取り組みではなく、体系的な研修プログラムを通じて組織全体に浸透させることが重要です。本記事では、心理的安全性研修の目的から具体的な研修設計、実施方法まで詳しく解説します。
心理的安全性とは何か?
職場における「心理的安全性」とは、メンバーが互いに遠慮せずに意見を述べたり、リスクを恐れずに発言・行動できる雰囲気や文化を指します。
たとえば、上司に対して「わかりません」と率直に伝えられる、同僚に相談しやすいと感じられる、失敗しても人格を否定されることがない、というような状態が心理的安全性の高い職場です。
この概念は、Googleが社内調査によって「成果を上げるチームの共通点」として心理的安全性を発表したことでも知られ、多くの企業が注目しています。
日本の中小企業では、少人数のチーム構成が多く、一人ひとりの発言や行動が組織全体に大きく影響するため、心理的安全性の確保はより重要なテーマです。
心理的安全性研修の主な目的
心理的安全性研修は、従業員が安心して働ける職場環境を構築することを目的としています。
具体的には、コミュニケーションスキルの向上、チーム内の信頼関係の構築、管理職によるサポート体制の強化などが挙げられます。
これにより、イノベーションの促進をはじめ、社員のエンゲージメントやモチベーションが高まり、組織の生産性や創造性の向上、さらには離職率の低下といった効果も期待できます。
心理的安全性研修の対象
この研修の対象は管理職に限定されるものではなく、すべての従業員が対象となり得ます。
特に、人事部門やリーダー層、マネージャー層は研修導入の旗振り役として中心的な役割を担います。また、新人や若手社員に向けた導入研修としても有効であり、組織全体で心理的安全性を共有するためには、段階的かつ継続的な学習機会が不可欠です。
心理的安全性研修はなぜ必要?
心理的安全性は、従業員一人ひとりの働きがいや、組織全体のパフォーマンスに直結する重要な要素です。
従業員の不安をなくし、最適な環境を作るため
心理的安全性が低い職場では、従業員が「これを言ったら評価が下がるのでは」と萎縮し、意見や提案を控える傾向があります。その結果、業務上の課題やリスクが放置されることも…。
研修を通じて、上司や同僚との信頼関係を築き、安心して発言できる文化を醸成することで、従業員の不安を軽減し、活発な情報共有と自律的な行動を促せます。
チームパフォーマンスの向上
心理的に安心できる環境では、メンバーが自由に意見を述べ合い、建設的な対話を重ねることができるため、問題解決の質が向上し、結果としてチームのパフォーマンスも高まるのです。
特に中小企業では一人ひとりの影響力が大きいため、研修によるチーム力の底上げは大きな成果に直結します。
企業ブランドイメージの向上のため
企業が心理的安全性に取り組むことにより、従業員エンゲージメントが向上したり、イノベーションが促進されたりすることが、外部からの評価にもつながります。
「社員を大切にする会社」という評判が広がれば、優秀な人材の獲得や定着率の向上にも貢献します。
また、取引先や顧客に対しても、対話を重視する文化が好印象を与え、企業イメージの向上にもつながるでしょう。
心理的安全性研修の内容とは
心理的安全性研修では、主に以下のようなテーマやスキルを学びます。
①心理的安全性とは何かを知る
まず導入フェーズでは、「心理的安全性とは何か」を参加者全員で共有し、共通の認識を持つところから始めましょう。
ここでは、Googleの調査結果や国内外の事例を交えながら、その必要性や効果を理解してもらうと良いでしょう。
②コミュニケーションスキルの向上
次に、コミュニケーションスキルの向上を目的とした実践的なセッションが行いましょう。
傾聴の姿勢や、共感的な応答、非言語的メッセージ(うなずき、表情など)の重要性を学び、実際の職場での対話を想定したロールプレイやグループワークを通じて体得させましょう。
③感情の扱い方を身に付ける
フィードバックの方法や感情の扱い方に関する内容も不可欠です。「問題点を指摘する」のではなく、「関係を壊さずに意見を伝える」スキルを学ばせることで、社員間の信頼関係が育まれやすくなります。
④アンコンシャス・バイアスに気づく方法を学ぶ
さらに、ハラスメントや偏見、差別に関する知識や、無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)への気づきを促すコンテンツも盛り込むことが大切です。これにより、誰もが安心して参加できる職場環境づくりにつながります。
⑤行動計画を立てる
研修の最終段階では、学んだ内容を自部署でどう活かすか、行動計画を立てるパートを設けましょう。研修の学びを「現場の行動」へとつなげていく流れを作れると理想的です。
心理的安全性研修の作り方
心理的安全性を高める研修を設計する上で重要なのは、「聞くだけ」ではなく、「感じて・考えて・実践する」機会をバランスよく設けることです。
ここでは、実施形態ごとの特徴と活用法をご紹介します。
講義形式でレクチャー
研修の導入には、心理的安全性に関する理論や背景を体系的に理解することが不可欠です。講義形式で、なぜ心理的安全性が必要なのか、組織にどのような影響を与えるのかといった基本知識をインプットさせましょう。
専門講師による解説や外部の実践事例を取り上げながら、納得感を持ってもらえるような構成を組めるとベストです。
ワークショップに参加する
ワークショップによって、参加者同士の対話や体験を通して、心理的安全性の本質を「実感」できます。
たとえば、実際の職場で起こり得るコミュニケーションのすれ違いをテーマにしたロールプレイや、共感や傾聴を意識したペアワークなどが有効です。
また、グループディスカッションを通じて「自分が安心して発言できる条件とは何か」を考えたり、ほかの受講生の視点を知ったりすることで、多様な価値観への理解が深まります。
こうした体験型の内容は、行動変容を促す起点となります。
動画研修を活用する
スケジュールの都合や多拠点展開を考慮すると、動画研修の併用も効果的です。特に「研修の入り口」として心理的安全性への関心を喚起するためには、映像の力が有効です。
たとえば、東映が提供する「ドラスタ」のように、職場のリアルな人間関係を描いた映像教材を使うことで、従業員が自分ごととして捉えやすくなります。
Drama-style video training東映の研修動画『ドラスタ』とは?
まとめ
心理的安全性は、単なる「仲の良い職場」づくりではなく、社員が安心して本音を語り、意見を出し合える風土を育てる土台となります。職場における心理的安全性が整うことで、業務の質が高まり、チームの連携が深まり、組織全体の生産性や創造性の向上が期待できます。
心理的安全性の醸成は、組織文化そのものを変える第一歩です。ぜひこの機会に、貴社の「安心して働ける職場づくり」への第一歩を踏み出してみてください。
心理的安全性の実現には、単発の取り組みではなく、継続的かつ実践的な研修プログラムの導入が重要です。
たとえば、ドラマ映像を活用した共感型の研修教材「ドラスタ」なども組み合わせることで、より実践的で記憶に残る学びを提供することが可能です。